多項式の割り算
整数\( a,b \)に対して、\( a \)を\( b \)で割って
\[ a \div b = q … r \]
となるとき、それぞれの文字\(a,b,q,r \)は
\begin{cases}
a = b \cdot q + r \\
0 \le r < b
\end{cases}
という関係式で表すことができる。
また、\( a,b \)に対して、このような関係式を満たす\( q,r \)はただ1通りしか存在しない。
同じように、多項式\( f(x),g(x) \)に対しても
\begin{align*}
& f(x) = g(x) \cdot q(x) + r(x) \\
& \text{ただし、(}r(x)\text{の次数)} < \text{(}g(x)\text{の次数)}
\end{align*}
となるような多項式\( q(x),r(x) \)はただ1通りしか存在しない。
このとき
\( q(x) \)を、\( f(x) \)を\( g(x) \)で割った商といい、
\( r(x) \)を、\( f(x) \)を\( g(x) \)で割った余りという。
たとえば、\( 2x^3 + 9x^2 + 13x + 8 \)を\( 2x + 3 \)で割ると
\begin{align*}
&2x^3 + 9x^2 + 13x + 8 \\
&= ( 2x + 3 )(x^2 + 3x + 2) + 2
\end{align*}
となり、商は\( x^2 + 3x + 2 \)、余りは\( 2 \)となります。
それでは、与えられた多項式\( f(x),g(x) \)に対する商や余りを求める手順を見ていきます。
3次式\( 2x^3 + 9x^2 + 13x + 8 \)を1次式\( 2x + 3 \)で割るので、商は必ず2次以下になります。また、余りは定数項になります。
つまり
\begin{align*}
&2x^3 + 9x^2 + 13x + 8 \\
&= (2x + 3)(ax^2 + bx + c) + r
\end{align*}
と表せます。
この式を展開すると
\begin{align*}
&(2x + 3)(ax^2 + bx + c) + r \\
&= 2ax^3 + 2bx^2 + 2cx + 3ax^2 + 3bx + 3c + r \\
&= 2ax^3 + (3a + 2b)x^2 + (3b + 2c)x + 3c + r
\end{align*}
となります。
よって
\begin{cases}
2a = 2 \\
3a + 2b = 9 \\
3b + 2c = 13 \\
3c + r = 8
\end{cases}
となる\( a,b,c,r \)を求めればよいということになります。
1つ目の式から\( a = 1 \)、
\( a \)の値が決まると2つ目の式から\( b = 3 \)、
\( b \)の値が決まると3つ目の式から\( c = 2 \)、
\( c \)の値が決まると4つ目の式から\( r = 2 \)というようにそれぞれの値が求まります。
言い換えると、商の最高次の項の係数(ここでは\( a \))から順番に各項の係数(\( b,c,r \))が定まっていくということです。
以上より
\begin{align*}
&2x^3 + 9x^2 + 13x + 8 \\
&= (2x + 3)(x^2 + 3x + 2) + 2
\end{align*}
多項式の割り算の筆算
整数の割り算と同じように、多項式の割り算でも筆算(のような方法)が使えます。
ポイントは、割られる式\( f(x) \)、割る式\( g(x) \)の最高次の項から考えることです。
つまり、\( 2x^3 + 9x^2 + 13x + 8 \)を\( 2x + 3 \)で割るときには、\( 2x^3 + 9x^2 + 13x + 8 \)の\( 2x^3 \)、\( 2x + 3 \)の\( 2x\)にまず着目して考えるということです。
まず、整数の割り算と同じように割る式と割られる式を以下のように書き、それぞれの最高次の項に注目します。
\begin{align*}
\fbox{$2x$} + 3 \overline{ ) \fbox{$2x^3$} + 9x^2 + 13x + 8 }
\end{align*}
\( 2x^3 \)を\( 2x \)で割ると\( x^2 \)が商となりますので、\( x^2 \)を立て、筆算の続きには割る式\( 2x + 3 \)に\( x^2 \)を掛けた\( 2x^3 + 3x^2 \)を書きます。
\begin{align*}
&\phantom{)2} x^2 \\
2x + 3 &\overline{ ) 2x^3 + 9x^2 + 13x + 8 } \\
&\phantom{)} 2x^3 + 3x^2
\end{align*}
そして、上の式から下の式を引いた結果を書きます。
\begin{align*}
&\phantom{)2} x^2 \\
2x + 3 &\overline{ ) 2x^3 + 9x^2 + 13x + 8 } \\
&\phantom{)} 2x^3 + 3x^2 \\
&\overline{ \phantom{ ) 2x^3 + } \ \ 6x^2 + 13x + 8 }
\end{align*}
次に、割る式\( 2x + 3 \)と余りの式\( 6x^2 + 13x + 8 \)の最高次の項に着目します。
\begin{align*}
&\phantom{)2} x^2 \\
\fbox{$2x$} + 3 &\overline{ ) 2x^3 + 9x^2 + 13x + 8 } \\
&\phantom{)} 2x^3 + 3x^2 \\
&\overline{ \phantom{ ) 2x^3 + } \ \ \fbox{$6x^2$} + 13x + 8 }
\end{align*}
商を立て、最初に行ったのと同様に計算していきます。
\begin{align*}
&\phantom{)2} x^2 + 3x \\
2x + 3 &\overline{ ) 2x^3 + 9x^2 + 13x + 8 } \\
&\phantom{)} 2x^3 + 3x^2 \\
&\overline{ \phantom{ ) 2x^3 + } \ 6x^2 + 13x + 8 } \\
&\phantom{ ) 2x^3 + } \ 6x^2 + \phantom{1} 9x \\
& \phantom{ ) 2x^3 + } \overline{ \phantom{ 6x^2 + 1} 4x + 8 }
\end{align*}
さらに、割る式\( 2x + 3 \)と余りの式\( 4x + 8 \)の最高次の項に着目し、商を立て、これまで行ったのと同様に計算していきます。
\begin{align*}
&\phantom{)2} x^2 + 3x \ \ + \phantom{1} 2 \\
2x + 3 &\overline{ ) 2x^3 + 9x^2 + 13x + 8 } \\
&\phantom{)} 2x^3 + 3x^2 \\
&\overline{ \phantom{ ) 2x^3 + } \ 6x^2 + 13x + 8 } \\
&\phantom{ ) 2x^3 + } \ 6x^2 + \phantom{1} 9x \\
& \phantom{ ) 2x^3 + } \overline{ \phantom{ 6x^2 + 1} 4x + 8 } \\
&\phantom{ ) 2x^3 + 6x^2 + } \phantom{1} 4x + 6 \\
&\phantom{ ) 2x^3 + 6x^2 + 1 } \overline{ \phantom{ 4x + } 2 }
\end{align*}
以上より
\begin{align*}
&2x^3 + 9x^2 + 13x + 8 \\
&= (2x + 3)(x^2 + 3x + 2) + 2
\end{align*}
組立除法は使わない(いらない)
多項式の割り算を計算する方法として、組立除法というものがあります。
詳しい説明は行いませんが、この組立除法はこれまで説明した方法で整式の割り算をできれば覚える価値がないものです。
主な理由としては、
- 割る式が1次式でないと使えない。
- 形が変わっただけで、やっていることは多項式の筆算と同じ。
という2つが挙げられます。
公式が出てきたときには、反射的に覚えようとするのではなく、本当に覚える必要があるのか、どのように導かれるのか…などを考える癖をつけてほしいと思います。