2次方程式や2次関数で、いちばん重要になってくるのが”平方完成”です。
”平方完成”さえできれば、2次方程式や2次関数の問題はほとんど解くことができます。
なので、学習の初期の段階では、無理に”解の公式”や”判別式”を覚えようとはしないで、しっかりと”平方完成”をマスターしていきましょう。
ここでは
- 平方完成することの意味やメリット
- 平方完成のやり方・手順
を解説いたします。
平方完成に至る思考やメリットについて
平方完成の具体的な手順を説明する前に、まずは”平方完成をすると、どのようなメリットがあるか?”ということを、以下の例題を通して考えていきましょう。
(例題1)
次の\( (1) \)~\( (3) \)の2次方程式の解を求めよ。
\( (1)\ x^2 = 5 \)
\( (2)\ (x – 3)^2 = 5 \)
\( (3)\ x^2 -6x + 4 = 0 \)
どうでしょうか?解けましたか?
\( (1) \)は
\begin{align*}
& x^2 = 5 \\
\Leftrightarrow \ & x = \pm \sqrt{5}
\end{align*}
\( (2) \)は
\begin{align*}
& (x – 3)^2 = 5 \\
\Leftrightarrow \ & x – 3 = \pm \sqrt{5} \\
\Leftrightarrow \ & x = 3 \pm \sqrt{5}
\end{align*}
と簡単に解くことができます。
問題は、\( (3) \)の方程式です。
\( (1),(2) \)は簡単だったけど、\( (3) \)はちょっと…
と思った方はいらっしゃいませんか?
でも、実は、\( (2) \)と\( (3) \)は、まったく同じ式なのです。
実際に、\( (2) \)の式を展開してみると
\begin{align*}
& (x – 3)^2 = 5 \\
\Leftrightarrow \ & x^2 -6x + 9 = 5 \\
\Leftrightarrow \ & x^2 -6x + 4 = 0
\end{align*}
となり、\( (3) \)の式と同じであることがわかります。
では、なぜ\( (2) \)は簡単にわかるけど、\( (3) \)はわかりにくいのでしょうか?
理由は、”変数\( x \)が何ヶ所に現れているか?”を考えてみるとわかります。
\( \ (x – 3)^2 = 5 \)では、変数\( x \)が現れているのは、\( (x – 3) \)の1ヶ所だけです。
一方、\( \ x^2 -6x + 4 = 0 \)では、変数\( x \)が、\( x^2 \)と\( -6x \)の2ヶ所にあります。
つまり、”\( (2) \)のほうが変数\( x \)の現れる回数が少ないので、簡単にわかる”ということです。
じゃあ、\( (3) \)から\( (2) \)の式に変形できたら、いいんだ!
ということに気づかれたでしょうか?
ここで紹介する”平方完成”とは、\( (3) \)の式を\( (2) \)の式のように変形して、2次式の変数\( x \)を1ヶ所にまとめる手法をいいます。
言い換えれば、2次式 \( x^2 + bx + c \) の \( x^2 + bx \) の部分を、\( (x + \fbox{ $\phantom{x}$ } )^2 \) の形に変形する手法とも言えます。
- 変数が現れる箇所が少ないほど、方程式の様子がわかりやすい
- 平方完成は、2次式の変数を1ヶ所にまとめる手法
平方完成の具体的な手順・やり方について
では、実際に、\( x^2 -6x + 4 = 0 \) を用いて、平方完成のやり方を見ていきましょう。
平方完成、つまり\( (x + \fbox{ $\phantom{x}$ })^2 \)の形を作るためのポイントは、” \( \fbox{ $\phantom{x}$ } \)の値がいくつなら、\( (x + \fbox{ $\phantom{x}$ })^2 \)を展開したときに\( x^2 -6x \)という形が出てくるか?”ということです。
その際に着目するのが、”\( x \)の係数”です。
\( (x + \fbox{ $\phantom{x}$ })^2 \)を展開すると、
\[ (x + \fbox{ $\phantom{x}$ })^2 = x^2 + 2\fbox{ $\phantom{x}$ }x + \fbox{ $\phantom{x}$ }^2 \]
となります。
ここからわかるのは、”展開すると\( x \)の係数には、\( \fbox{ $\phantom{x}$ } \)の2倍の数が現れる”ということです。
逆にいえば、”\( (x + \fbox{ $\phantom{x}$ })^2 \)の形にするには、\( \fbox{ $\phantom{x}$ } \)に\( x \)の係数の半分の数を入れればいい”ということです。
つまり、\( x^2 -6x \)から\( (x + \fbox{ $\phantom{x}$ })^2 \)の形を作るには、\( \fbox{ $\phantom{x}$ } \)に\( x \)の係数\( -6 \)の半分の\( -3 \)を入れて、\( (x – 3)^2 \)とすればいいのです。
ちょっと待って!
\( (x – 3)^2 \)を展開すると \( x^2 – 6x + 9 \) で \( x^2 -6x \) にならないじゃない!?
その通りです!なので、帳尻合わせが必要になります。
\( (x – 3)^2 \)から余分な\( 9 \)を引いちゃいましょう。
\[ x^2 -6x = (x – 3)^2 – 9 \]
こうすることで、変数\( x \)が1ヶ所に集めることができました。
つまり、\( x^2 -6x + 4 = 0 \) は
\begin{align*}
& x^2 -6x + 4 = 0 \\
\Leftrightarrow \ & (x – 3)^2 – 9 + 4 = 0 \\
\Leftrightarrow \ & (x – 3)^2 = 5
\end{align*}
と変形することができるのです。
ここまでの手順を、一度まとめておきます。
【平方完成の手順】
- \( x \)の係数の半分の値を使って、\( (x + \fbox{ $\phantom{x}$ })^2 \)の形を作る
- 余分な数である\( \fbox{ $\phantom{x}$ }^2 \)を引く
一般の2次式 \( ax^2 + bx + c \) を平方完成してみる
ここでは練習の意味も兼ねて、一般の2次式 \( ax^2 + bx + c \ (a \neq 0) \) を平方完成してみましょう。
この \( ax^2 + bx + c \) と、いままで見てきた式との違いはなんでしょうか?
\( x^2 \)の係数が \( 1 \) じゃなくて、\( a \) になってる!
ということですよね。
\( x^2 \)の係数が \( 1 \) なら良かったのに…なんて考えてしまいます。
そこで、\( x^2 \)の係数 \( a \) で、\( x^2,x \) の項をくくって、\( x^2 \)の係数が \( 1 \) となるように変形しましょう。
\begin{align*}
& ax^2 + bx + c \\
= \ & a(x^2 + \frac{b}{a}x) + c
\end{align*}
こうしてできた \( \displaystyle x^2 + \frac{b}{a}x \) の部分を、いままで見てきた手順にしたがって平方完成していきます。
以下に、もう一度、平方完成の手順を載せておきます。
【平方完成の手順】
- \( x \)の係数の半分の値を使って、\( (x + \fbox{ $\phantom{x}$ })^2 \)の形を作る
- 余分な数である\( \fbox{ $\phantom{x}$ }^2 \)を引く
まず、\( x \)の係数は、\( \displaystyle \frac{b}{a} \)なので、その半分の\( \displaystyle \frac{b}{2a} \)で、\( (x + \fbox{ $\phantom{x}$ })^2 \)の形を作ることができます。
そして、その後で余分な数の\( \displaystyle (\frac{b}{2a})^2 \)を引いておきましょう。
つまり、\( \displaystyle x^2 + \frac{b}{a}x \)の部分は
\begin{align*}
& x^2 + \frac{b}{a}x \\
= \ & (x + \frac{b}{2a} )^2 – (\frac{b}{2a})^2
\end{align*}
と表されるので、元の式を変形した \( \displaystyle a(x^2 + \frac{b}{a}x) + c \) は
\begin{align*}
& a(x^2 + \frac{b}{a}x) + c \\
= \ & a\{ (x + \frac{b}{2a} )^2 – (\frac{b}{2a})^2 \} + c \\
= \ & a(x + \frac{b}{2a} )^2 – \frac{b^2}{4a} + c \\
= \ & a(x + \frac{b}{2a} )^2 – \frac{b^2 – 4ac}{4a}
\end{align*}
となり、平方完成ができました。
解の公式や判別式は平方完成から証明できる
解の公式や判別式(2次方程式の解の個数)は、平方完成から導くことができます。
これは、言い換えると、”平方完成ができれば、解の公式や判別式を覚えていなくても問題は解ける”ということです。
逆に、解の公式や判別式を覚えていても、平方完成のやり方をマスターしていないと解けない問題はたくさんあります。
なので、学習の初期の段階では、暗記の量を減らすためにも、平方完成をしっかりと身につけていきましょう。
ここで平方完成の手順を理解したなら、実際に平方完成を使って2次関数の問題を解いていきましょう。
いくつかの問題は、2次方程式・2次関数の問題は”平方完成”さえできれば解ける!でも紹介していますので、合わせてご覧ください。