3の倍数かどうかを判定する方法として
「各桁の数字の和が3の倍数であれば、3の倍数である」
といったことを聞いたことがある人は多いと思います。
そういった”倍数の判定方法”の発想の原点には、ユークリッドの互除法や不定方程式で紹介した
都合のいい部分とそうでない部分に分ける
という考え方があります。
ここでは、その発想を使って
2~11の倍数の判定方法とその証明
を説明いたします。
倍数の判定方法 一覧
まず、2~11の倍数の判定方法の一覧を掲載いたします。
これらの判定方法は、暗記する必要はありません。どのように導かれるのかを想像しながら眺めてみてください。
※中には、素直に割り算をして余りが出るか確かめたほうが早いものもありますので、参考程度にご覧いただければと思います。
【倍数の判定方法】
(2の倍数)
- 下1桁が偶数である。
(3の倍数)
- 各桁の数の和が3の倍数である。
(4の倍数)
- 下2桁が4の倍数である。
- 下2桁目の数を2倍し、
下1桁目に足した数が4の倍数である。
(5の倍数)
- 下1桁が0または5である。
(6の倍数)
- 2の倍数 かつ 3の倍数である。
- 下1桁目以外の数の和を4倍し、
下1桁目に足した数が6の倍数である。 - 下1桁目以外の数の和を2倍し、
下1桁目から引いた数が6の倍数である。
(7の倍数)
- 下1,7,13,…桁目を1倍、
下2,8,14,…桁目を3倍、
下3,9,15,…桁目を2倍して足し、
下4,10,16,…桁目を1倍、
下5,11,17,…桁目を3倍、
下6,12,18,…桁目を2倍して引いたものが7の倍数である。 - 「下1桁目を5倍し、それ以外の数に足す」という操作を繰り返した数が7の倍数である。
(8の倍数)
- 下3桁が8の倍数である。
- 下3桁目を4倍、
下2桁目を2倍し、
下1桁目に足した数が8の倍数である。
(9の倍数)
- 各桁の数の和が9の倍数である。
(10の倍数)
- 下1桁が0である。
(11の倍数)
- 奇数桁(下1,3,5,…桁目)の数字を足し、
偶数桁(下2,4,6,…桁目)の数字を引いたものが11の倍数である。
倍数の判定方法の証明
発想・証明の基本方針
ここで紹介する倍数の判定法ですが、その発想や証明の基本方針は
「十進法で表したときの\( 10^{n} \)の部分を、その倍数で割り切れる部分と割り切れない部分に分けること」
です。
たとえば、6桁の数字\( abcdef \)がある倍数かどうかを判定したいとします。
\( abcdef \)は
\begin{align}
& a \times 10^{5} + b \times 10^{4} + c \times 10^{3} \\
& + d \times 10^{2} + e \times 10 + f \\
\end{align}
と表せます。
このように表した場合、
- \( 10^{5},10^{4},10^{3},10^{2},10 \)は、その倍数で割り切れるのか
- 割り切れない場合、\( 10^{5},10^{4},10^{3},10^{2},10 \)は、割り切れる部分と割り切れない部分を分けるとどのように表せるのか
といったことが、どの倍数判定でも共通する考え方になります。
言葉だけではわかりにくいと思いますので、具体的に倍数の判定方法を証明する中で詳しく説明したいと思います。
2の倍数の判定方法の証明
2の倍数の判定方法は
- 下1桁が偶数である
というものです。
(証明)
十進法で6桁の数字\( abcdef \)は
\begin{align}
& a \times 10^{5} + b \times 10^{4} + c \times 10^{3} \\
& + d \times 10^{2} + e \times 10 + f \\
\end{align}
と表すことができます。
また、\( 10^{n} \)は、\( n \)が1以上であれば2で割り切れます。
実際に計算してみると
\begin{align}
& 10\phantom{^{1}} \div 2 = 5 \\
& 10^{2} \div 2 = 50 \\
& 10^{3} \div 2 = 500 \\
& 10^{4} \div 2 = 5000 \\
& 10^{5} \div 2 = 50000 \\
\end{align}
となります。
つまり、\( 10^{n} \)は
\begin{align}
10 \phantom{^{1}} & = 2 \cdot 5 \\
10^{2} & = 2 \cdot 50 \\
10^{3} & = 2 \cdot 500 \\
10^{4} & = 2 \cdot 5000 \\
10^{5} & = 2 \cdot 50000 \\
\end{align}
というように書き換えることができます。
つまり、6桁の数字\( abcdef \)は
\begin{align}
& a \times 10^{5} + b \times 10^{4} + c \times 10^{3} \\
& + d \times 10^{2} + e \times 10 + f \\
= & a( 2 \cdot 50000 ) + b( 2 \cdot 5000 ) + c( 2 \cdot 500 ) \\
& + d( 2 \cdot 50 ) + e( 2 \cdot 5 ) + f \\
= & \underline{ 2(50000 a + 5000 b + 500 c + 50 d + 5e ) } \\
& + f
\end{align}
と表すことができます。
下線部は2で割り切れますので、
\( f \)が2で割り切れるか0であれば、十進法の\( abcdef \)は2で割り切れる
ということになります。
言い換えると、
下一桁の\( f \)が偶数(0を含む)であれば、6桁の数字\( abcdef \)は2の倍数
と判定できるということになります。
3の倍数の判定方法の証明
3の倍数の判定方法は
- 各桁の数の和が3の倍数である
というものです。
(証明)
十進法で6桁の数字\( abcdef \)は
\begin{align}
& a \times 10^{5} + b \times 10^{4} + c \times 10^{3} \\
& + d \times 10^{2} + e \times 10 + f \\
\end{align}
と表すことができます。
また、\( 10^{n} \)は、3で割ると余りが1出てきます。
実際に計算してみると
\begin{align}
& 10\phantom{^{1}} \div 3 = 3 \cdots 1 \\
& 10^{2} \div 3 = 33 \cdots 1 \\
& 10^{3} \div 3 = 333 \cdots 1 \\
& 10^{4} \div 3 = 3333 \cdots 1 \\
& 10^{5} \div 3 = 33333 \cdots 1 \\
\end{align}
となり、余りが1出てきます。
つまり、\( 10^{n} \)は
\begin{align}
10 \phantom{^{1}} & = 3 \cdot 3 + 1 \\
10^{2} & = 3 \cdot 33 + 1 \\
10^{3} & = 3 \cdot 333 + 1 \\
10^{4} & = 3 \cdot 3333 + 1 \\
10^{5} & = 3 \cdot 33333 + 1 \\
\end{align}
というように書き換えることができます。
これは、
\( 10^{n} \)を3で割り切れる部分と割り切れない部分に分けたら、3で割り切れない部分は1である
ということです。
つまり、6桁の数字\( abcdef \)は
\begin{align}
& a \times 10^{5} + b \times 10^{4} + c \times 10^{3} \\
& + d \times 10^{2} + e \times 10 + f \\
= & a (3 \cdot 33333 + 1) + b (3 \cdot 3333 + 1) \\
& + c (3 \cdot 333 + 1) + d (3 \cdot 33 + 1) \\
& + e (3 \cdot 3 + 1) + f \\
= & \underline{ 3( 33333a + 3333b + 333c + 33d + 3e ) } \\
& + (a + b + c + d + e + f ) \\
\end{align}
と表すことができます。
また、下線部は3で割り切れます。
つまり、下線部以外の\( a + b + c + d + e + f \)が3で割り切れれば、十進法の\( abcdef \)は3で割り切れることになります。
言い換えると、各桁の和が3の倍数であれば、6桁の数字\( abcdef \)は3の倍数と判定できるということになります。
4の倍数の判定方法の証明
4の倍数の判定方法は
- 下2桁が4の倍数である。
- 2桁目の数を2倍し、1桁目の数を足した数が4の倍数である。
の2つあります。
(証明)
十進法で6桁の数字\( abcdef \)は
\begin{align}
& a \times 10^{5} + b \times 10^{4} + c \times 10^{3} \\
& + d \times 10^{2} + e \times 10 + f \\
\end{align}
と表すことができます。
また、\( 10^{n} \)は、\( n \)が2以上であれば4で割り切れます。
実際に計算してみると
\begin{align}
& 10^{2} \div 4 = 25 \\
& 10^{3} \div 4 = 250 \\
& 10^{4} \div 4 = 2500 \\
& 10^{5} \div 4 = 25000 \\
\end{align}
となります。
つまり、\( 10^{n} \)は
\begin{align}
10^{2} & = 4 \cdot 25 \\
10^{3} & = 4 \cdot 250 \\
10^{4} & = 4 \cdot 2500 \\
10^{5} & = 4 \cdot 25000 \\
\end{align}
というように書き換えることができます。
つまり、6桁の数字\( abcdef \)は
\begin{align}
& a \times 10^{5} + b \times 10^{4} + c \times 10^{3} \\
& + d \times 10^{2} + e \times 10 + f \\
= & a( 4 \cdot 25000 ) + b( 4 \cdot 2500 ) + c( 4 \cdot 250 ) \\
& + d( 4 \cdot 25 ) + 10e + f \\
= & \underline{ 4(25000 a + 2500 b + 250 c + 25d ) } \\
& + 10e + f
\end{align}
と表すことができます。
また、下線部は4で割り切れます。
つまり、下線部以外の\( 10e + f \)が4で割り切れるか0であれば、十進法の\( abcdef \)は4で割り切れることになります。
言い換えると、下二桁の\( 10e + f \)が4の倍数(0を含む)であれば、6桁の数字\( abcdef \)は4の倍数と判定できるということになります。
また、下二桁部分の\( 10e + f \)を、さらに4の倍数で割り切れる部分とそうでない部分に分けていくと
\begin{align}
10e + f & = (4 \cdot 2 + 2 )e + f \\
& = \underline{ 4\cdot 2e } + 2e + f \\
\end{align}
と表すこともできます。
下線部は4で割り切れますので、下線部以外の\( 2e + f \)が4で割り切れれば、下二桁の\( 10e + f \)も4の倍数となります。
よって、2桁目の数を2倍し、1桁目の数を足した\( 2e + f \)が4の倍数(0を含む)であれば、6桁の数字\( abcdef \)も4の倍数と判定することもできます。
5の倍数の判定方法の証明
5の倍数の判定方法は
- 下1桁が0または5である。
というものです。
(証明)
証明のやり方は、2の倍数のときとほとんど同じです。
十進法で6桁の数字\( abcdef \)は
\begin{align}
& a \times 10^{5} + b \times 10^{4} + c \times 10^{3} \\
& + d \times 10^{2} + e \times 10 + f \\
\end{align}
と表すことができます。
また、\( 10^{n} \)は、\( n \)が1以上であれば5で割り切れます。
実際に計算してみると
\begin{align}
& 10\phantom{^{1}} \div 5 = 2 \\
& 10^{2} \div 5 = 20 \\
& 10^{3} \div 5 = 200 \\
& 10^{4} \div 5 = 2000 \\
& 10^{5} \div 5 = 20000 \\
\end{align}
となります。
つまり、\( 10^{n} \)は
\begin{align}
10 \phantom{^{1}} & = 5 \cdot 2 \\
10^{2} & = 5 \cdot 20 \\
10^{3} & = 5 \cdot 200 \\
10^{4} & = 5 \cdot 2000 \\
10^{5} & = 5 \cdot 20000 \\
\end{align}
というように書き換えることができます。
つまり、6桁の数字\( abcdef \)は
\begin{align}
& a \times 10^{5} + b \times 10^{4} + c \times 10^{3} \\
& + d \times 10^{2} + e \times 10 + f \\
= & a( 5 \cdot 20000 ) + b( 5 \cdot 2000 ) + c( 5 \cdot 200 ) \\
& + d( 5 \cdot 20 ) + e( 5 \cdot 2 ) + f \\
= & \underline{ 5(20000 a + 2000 b + 200 c + 20 d + 2e ) } \\
& + f
\end{align}
と表すことができます。
また、下線部は5で割り切れます。
つまり、下線部以外の\( f \)が5で割り切れるか0であれば、十進法の\( abcdef \)は5で割り切れることになります。
言い換えると、下一桁の\( f \)が0か5であれば、6桁の数字\( abcdef \)は5の倍数と判定できるということになります。
6の倍数の判定方法の証明
6の倍数の判定方法は
- 2の倍数 かつ 3の倍数である。
- 1桁目以外の数の和を4倍し、1桁目の数を足した数が6の倍数である。
- 1桁目以外の数の和を2倍し、1桁目の数から引いた数が6の倍数である。
の3つがあります。
(証明)
1つ目の「2の倍数 かつ 3の倍数である」は、多くの方が「当たり前だろ!」と感じると思いますので、ここでは証明を省略いたします。
※きちんとした証明は、「2の倍数 かつ 3の倍数である」という条件は、「6の倍数である」ことの必要十分条件になっていることを示せば良いです。
証明については、必要条件・十分条件の問題(3)にて取り扱っていますので、そちらをご覧ください。
さて、ここからは2つ目、3つ目の判定方法の証明に移っていきます。
十進法で6桁の数字\( abcdef \)は
\begin{align}
& a \times 10^{5} + b \times 10^{4} + c \times 10^{3} \\
& + d \times 10^{2} + e \times 10 + f \\
\end{align}
と表すことができます。
また、\( 10^{n} \)は、6で割ると余りが4出てきます。
実際に計算してみると
\begin{align}
& 10\phantom{^{1}} \div 6 = 1 \cdots 4 \\
& 10^{2} \div 6 = 16 \cdots 4 \\
& 10^{3} \div 6 = 166 \cdots 4 \\
& 10^{4} \div 6 = 1666 \cdots 4 \\
& 10^{5} \div 6 = 16666 \cdots 4 \\
\end{align}
となり、余りが4出てきます。
つまり、\( 10^{n} \)は
\begin{align}
10 \phantom{^{1}} & = 6 \cdot 1 + 4 \\
10^{2} & = 6 \cdot 16 + 4 \\
10^{3} & = 6 \cdot 166 + 4 \\
10^{4} & = 6 \cdot 1666 + 4 \\
10^{5} & = 6 \cdot 16666 + 4 \\
\end{align}
というように書き換えることができます。
これは、
\( 10^{n} \)を6で割り切れる部分と割り切れない部分に分けたら、6で割り切れない部分は4である
ということです。
つまり、6桁の数字\( abcdef \)は
\begin{align}
& a \times 10^{5} + b \times 10^{4} + c \times 10^{3} \\
& + d \times 10^{2} + e \times 10 + f \\
= & a (6 \cdot 16666 + 4) + b (6 \cdot 1666 + 4) \\
& + c (6 \cdot 166 + 4) + d (6 \cdot 16 + 4) \\
& + e (6 \cdot 1 + 4) + f \\
= & \underline{ 6( 16666 a + 1666 b + 166 c + 16 d + e ) } \\
& + 4(a + b + c + d + e ) + f \\
\end{align}
と表すことができます。
また、下線部は6で割り切れます。
つまり、下線部以外の\( 4( a + b + c + d + e ) + f \)が6で割り切れれば、十進法の\( abcdef \)は6で割り切れることになります。
言い換えると、1桁目以外の数の和を4倍し、1桁目の数を足した数が6の倍数であれば、6桁の数字\( abcdef \)は6の倍数と判定できるということになります。
また、\( 10^{n} \)は
\begin{align}
10 \phantom{^{1}} & = 6 \cdot 2 – 2 \\
10^{2} & = 6 \cdot 17 – 2 \\
10^{3} & = 6 \cdot 167 – 2 \\
10^{4} & = 6 \cdot 1667 – 2 \\
10^{5} & = 6 \cdot 16667 – 2 \\
\end{align}
というように書き換えることもできます。
このとき、6桁の数字\( abcdef \)は
\begin{align}
& a \times 10^{5} + b \times 10^{4} + c \times 10^{3} \\
& + d \times 10^{2} + e \times 10 + f \\
= & a (6 \cdot 16667 – 2) + b (6 \cdot 1667 – 2) \\
& + c (6 \cdot 167 – 2) + d (6 \cdot 17 – 2) \\
& + e (6 \cdot 2 – 2) + f \\
= & \underline{ 6( 16667 a + 1667 b + 167 c + 17 d + 2 e ) } \\
& – 2(a + b + c + d + e ) + f \\
\end{align}
と表すことができます。
下線部は6で割り切れますので、下線部以外の\( – 2(a + b + c + d + e ) + f \)が6で割り切れれば、十進法の\( abcdef \)は6で割り切れることになります。
言い換えると、1桁目以外の数の和を2倍し、1桁目の数から引いた数が6の倍数であれば、6桁の数字\( abcdef \)は6の倍数と判定できるということになります。
7の倍数の判定方法の証明
7の倍数の判定方法は
- 下1,7,13,…桁目を1倍、
下2,8,14,…桁目を3倍、
下3,9,15,…桁目を2倍して足し、
下4,10,16,…桁目を1倍、
下5,11,17,…桁目を3倍、
下6,12,18,…桁目を2倍して引いたものが7の倍数である。 - 「下1桁目を5倍し、それ以外の数に足す」という操作を繰り返した数が7の倍数である。
の2つあります。
言葉だけでは何を言っているのかイマイチわからないと思いますので、証明の前に具体な数字\( 8641 \)を使って説明します。
(ひとつ目の判定方法を実際に使ってみる)
まずは、\( 8641 \)の下1~3桁目までを順番に1倍,3倍,2倍し、足し合わせていきます。
\begin{align}
& 1 \cdot 1 + 4 \cdot 3 + 6 \cdot 2 \\
= & 1 + 12 + 12 \\
= & 25
\end{align}
次に、下4桁目を1倍、下5桁目を3倍、下6桁目を2倍したものを引きますが、\( 8641 \)は4桁までしかありませんので、下4桁目を1倍したものを1~3桁目の計算結果の\( 25 \)から引きます。
\begin{align}
& 25 – 8 \cdot 1 \\
= & 25 – 8 \\
= & 17
\end{align}
こうして出てきた\( 17 \)は7の倍数ではないので、\( 8641 \)は7の倍数ではないと判定できます。
(ひとつ目の判定方法の証明)
十進法で6桁の数字\( abcdef \)は
\begin{align}
& a \times 10^{5} + b \times 10^{4} + c \times 10^{3} \\
& + d \times 10^{2} + e \times 10 + f \\
\end{align}
と表すことができます。
また、\( 10^{n} \)は、7で割ると
- \( n = 6k \)のとき、余りが1
- \( n = 6k + 1 \)のとき、余りが3
- \( n = 6k + 2 \)のとき、余りが2
- \( n = 6k + 3 \)のとき、余りが6
- \( n = 6k + 4 \)のとき、余りが4
- \( n = 6k + 5 \)のとき、余りが5
となります。( \( k:0,1,2,3,\cdots \) )
実際に\( n = 1,2,3,4,5,6 \)の場合で計算してみると
\begin{align}
& 10\phantom{^{1}} \div 7 = 1 \cdots 3 \\
& 10^{2} \div 7 = 14 \cdots 2 \\
& 10^{3} \div 7 = 142 \cdots 6 \\
& 10^{4} \div 7 = 1428 \cdots 4 \\
& 10^{5} \div 7 = 14285 \cdots 5 \\
& 10^{6} \div 7 = 142857 \cdots 1 \\
\end{align}
となります。
つまり、\( 10^{n} \)は
\begin{align}
10 \phantom{^{1}} & = 7 \cdot 1 + 3 \\
10^{2} & = 7 \cdot 14 + 2 \\
10^{3} & = 7 \cdot 142 + 6 \\
10^{4} & = 7 \cdot 1428 + 4 \\
10^{5} & = 7 \cdot 14285 + 5 \\
10^{6} & = 7 \cdot 142857 + 1 \\
\end{align}
というように書き換えることができます。
さらに、\( 10^{3},10^{4},10^{5} \)はそれぞれ
\begin{align}
10^{3} & = 7 \cdot 143 – 1 \\
10^{4} & = 7 \cdot 1429 – 3 \\
10^{5} & = 7 \cdot 14286 – 2 \\
\end{align}
と書き換えることができます。
このとき、6桁の数字\( abcdef \)は
\begin{align}
& a \times 10^{5} + b \times 10^{4} + c \times 10^{3} \\
& + d \times 10^{2} + e \times 10 + f \\
= & a (7 \cdot 14286 – 2) + b (7 \cdot 1429 – 3) \\
& + c (7 \cdot 143 – 1) + d (7 \cdot 14 + 2) \\
& + e (7 \cdot 1 + 3) + f \\
= & \underline{ 7( 14286 a + 1429 b + 143 c + 14 d + e ) } \\
& – 2a – 3b – c + 2d + 3e + f \\
\end{align}
と表すことができます。
下線部は7で割り切れますので、下線部以外の\( – 2a – 3b – c + 2d + 3e + f \)が7で割り切れれば、十進法の\( abcdef \)は7で割り切れることになります。
言い換えると、下1,7,13,…桁目を1倍、下2,8,14,…桁目を3倍、下3,9,15,…桁目を2倍して足し、下4,10,16,…桁目を1倍、下5,11,17,…桁目を3倍、下6,12,18,…桁目を2倍して引いたものが7の倍数であれば、6桁の数字\( abcdef \)は7の倍数と判定できるということになります。
さて、今度は2つ目の判定方法の
「1桁目を5倍し、それ以外の数に足す」という操作を繰り返した数が7の倍数である。
の具体例と証明です。
(ふたつ目の判定方法を実際に使ってみる)
最初に、\( 8641 \)の1桁目の\( 1 \)を5倍し、それ以外の数\( 864 \)に足します。
\begin{align}
& 864 + 1 \cdot 5 \\
= & 864 + 5 \\
= & 869
\end{align}
今度は、\( 869 \)の1桁目の\( 9 \)を5倍し、それ以外の数\( 86 \)に足します。
\begin{align}
& 86 + 9 \cdot 5 \\
= & 86 + 45 \\
= & 131
\end{align}
さらに、\( 131\)の1桁目の\( 1 \)を5倍し、それ以外の数\( 13 \)に足します。
\begin{align}
& 13 + 1 \cdot 5 \\
= & 13 + 5 \\
= & 18
\end{align}
こうして出てきた\( 18 \)は7の倍数ではないので、\( 8641 \)は7の倍数ではないと判定できます。
(ふたつ目の判定方法の証明)
十進法で6桁の数字\( abcdef \)は
\begin{align}
& a \times 10^{5} + b \times 10^{4} + c \times 10^{3} \\
& + d \times 10^{2} + e \times 10 + f \\
\end{align}
と表すことができます。
ここに、\( 49f \)を加えた
\begin{align}
& a \times 10^{5} + b \times 10^{4} + c \times 10^{3} \\
& + d \times 10^{2} + e \times 10 + 50f \\
\end{align}
を考えます。
\( 49f \)は7の倍数なので、元の式に\( 49f \)を加えたこの式が7の倍数であれば、元の式
\begin{align}
& a \times 10^{5} + b \times 10^{4} + c \times 10^{3} \\
& + d \times 10^{2} + e \times 10 + f \\
\end{align}
も7の倍数となります。
元の式に\( 49f \)を加えた式は
\begin{align}
& a \times 10^{5} + b \times 10^{4} + c \times 10^{3} \\
& + d \times 10^{2} + e \times 10 + 50f \\
= & 10(a \times 10^{4} + b \times 10^{3} + c \times 10^{2} \\
& \phantom{10} + d \times 10 + e + 5f)
\end{align}
と書き換えることができます。
10は7の倍数ではないので、()の中の式が7の倍数であれば、6桁の数字\( abcdef \)も7の倍数になります。
また、()内は下1桁目を5倍し、それ以外の数に足した形になっています。
つまり、下1桁目を5倍し、それ以外の数に足したものが7の倍数であれば、6桁の数字\( abcdef \)も7の倍数になります。
8の倍数の判定方法の証明
8の倍数の判定方法は
- 下3桁が8の倍数である。
- 下3桁目を4倍、
下2桁目を2倍し、
下1桁目と足した数が8の倍数である。
の2つあります。
(証明)
証明のやり方は、4の倍数のときとほとんど同じです。
十進法で6桁の数字\( abcdef \)は
\begin{align}
& a \times 10^{5} + b \times 10^{4} + c \times 10^{3} \\
& + d \times 10^{2} + e \times 10 + f \\
\end{align}
と表すことができます。
また、\( 10^{n} \)は、\( n \)が3以上であれば8で割り切れます。
実際に計算してみると
\begin{align}
& 10^{3} \div 8 = 125 \\
& 10^{4} \div 8 = 1250 \\
& 10^{5} \div 8 = 12500 \\
\end{align}
となります。
つまり、\( 10^{n} \)は
\begin{align}
10^{3} & = 8 \cdot 125 \\
10^{4} & = 8 \cdot 1250 \\
10^{5} & = 8 \cdot 12500 \\
\end{align}
というように書き換えることができます。
つまり、6桁の数字\( abcdef \)は
\begin{align}
& a \times 10^{5} + b \times 10^{4} + c \times 10^{3} \\
& + d \times 10^{2} + e \times 10 + f \\
= & a( 8 \cdot 12500 ) + b( 8 \cdot 1250 ) + c( 8 \cdot 125 ) \\
& + 100d + 10e + f \\
= & \underline{ 8(12500 a + 1250 b + 125 c ) } \\
& + 100d + 10e + f \\
\end{align}
と表すことができます。
また、下線部は8で割り切れます。
つまり、下線部以外の\( 100d + 10e + f \)が8で割り切れるか0であれば、十進法の\( abcdef \)は8で割り切れることになります。
言い換えると、下三桁の\( 100d + 10e + f \)が8の倍数(0を含む)であれば、6桁の数字\( abcdef \)は8の倍数と判定できるということになります。
また、下三桁部分の\( 100d + 10e + f \)を、さらに8の倍数で割り切れる部分とそうでない部分に分けていくと
\begin{align}
& 100d + 10e + f \\
= & (8 \cdot 12 + 4)d + (8 \cdot 1 + 2 )e + f \\
= & \underline{ 8( 12d + e ) } + 4d + 2e + f \\
\end{align}
と表すこともできます。
下線部は8で割り切れますので、下線部以外の\( 4d + 2e + f \)が8で割り切れれば、下三桁の\( 100d + 10e + f \)も8の倍数となります。
よって、下3桁目の数を4倍、下2桁目の数を2倍し、下1桁目に足した\( 4d + 2e + f \)が8の倍数(0を含む)であれば、6桁の数字\( abcdef \)も8の倍数と判定することもできます。
9の倍数の判定方法の証明
9の倍数の判定方法は
- 各桁の数の和が9の倍数である。
というものです。
(証明)
証明のやり方は、9の倍数のときとほとんど同じです。
十進法で6桁の数字\( abcdef \)は
\begin{align}
& a \times 10^{5} + b \times 10^{4} + c \times 10^{3} \\
& + d \times 10^{2} + e \times 10 + f \\
\end{align}
と表すことができます。
また、\( 10^{n} \)は、9で割ると余りが1出てきます。
実際に計算してみると
\begin{align}
& 10\phantom{^{1}} \div 9 = 1 \cdots 1 \\
& 10^{2} \div 9 = 11 \cdots 1 \\
& 10^{3} \div 9 = 111 \cdots 1 \\
& 10^{4} \div 9 = 1111 \cdots 1 \\
& 10^{5} \div 9 = 11111 \cdots 1 \\
\end{align}
となり、余りが1出てきます。
つまり、\( 10^{n} \)は
\begin{align}
10 \phantom{^{1}} & = 9 \cdot 1 + 1 \\
10^{2} & = 9 \cdot 11 + 1 \\
10^{3} & = 9 \cdot 111 + 1 \\
10^{4} & = 9 \cdot 1111 + 1 \\
10^{5} & = 9 \cdot 11111 + 1 \\
\end{align}
というように書き換えることができます。
これは、
\( 10^{n} \)を9で割り切れる部分と割り切れない部分に分けたら、9で割り切れない部分は1である
ということです。
つまり、6桁の数字\( abcdef \)は
\begin{align}
& a \times 10^{5} + b \times 10^{4} + c \times 10^{3} \\
& + d \times 10^{2} + e \times 10 + f \\
= & a (9 \cdot 11111 + 1) + b (9 \cdot 1111 + 1) + \\
& c (9 \cdot 111 + 1) + d (9 \cdot 11 + 1) \\
& + e (9 \cdot 1 + 1) + f \\
= & \underline{ 9( 11111a + 1111b + 111c + 11d + 1e ) } \\
& + (a + b + c + d + e + f ) \\
\end{align}
と表すことができます。
また、下線部は9で割り切れます。
つまり、下線部以外の\( a + b + c + d + e + f \)が9で割り切れれば、十進法の\( abcdef \)は9で割り切れることになります。
言い換えると、各桁の和が9の倍数であれば、6桁の数字\( abcdef \)は9の倍数と判定できるということになります。
10の倍数の判定方法の証明
10の倍数の判定方法は
- 下1桁が0である。
というものです。
(証明)
十進法で6桁の数字\( abcdef \)は
\begin{align}
& a \times 10^{5} + b \times 10^{4} + c \times 10^{3} \\
& + d \times 10^{2} + e \times 10 + f \\
\end{align}
と表すことができます。
これは
\begin{align}
& a \times 10^{5} + b \times 10^{4} + c \times 10^{3} \\
& + d \times 10^{2} + e \times 10 + f \\
= & \underline{ 10( a \times 10^{4} + b \times 10^{3} + c \times 10^{2} }\\
& \underline{ + d \times 10 + e ) } + f \\
\end{align}
と表すことができ、下線部は10で割り切れます。
つまり、下線部以外の\( f \)が0であれば、十進法の\( abcdef \)は10で割り切れることになります。
言い換えると、下一桁の\( f \)が0であれば、6桁の数字\( abcdef \)は10の倍数と判定できるということになります。
11の倍数の判定方法の証明
11の倍数の判定方法は
- 奇数桁(1,3,5桁目)を足し、偶数桁(2,4,6桁目)を引いたものが11の倍数である。
というものです。
(証明)
十進法で6桁の数字\( abcdef \)は
\begin{align}
& a \times 10^{5} + b \times 10^{4} + c \times 10^{3} \\
& + d \times 10^{2} + e \times 10 + f \\
\end{align}
と表すことができます。
また、\( 10^{n} \)は、11で割ると
- \( n = 2k \)のとき、余りが1
- \( n = 2k + 1 \)のとき、余りが10
となります。( \( k:0,1,2,3,\cdots \) )
実際に\( n = 2,3,4,5 \)の場合で計算してみると
\begin{align}
& 10^{2} \div 11 = 9 \cdots 1 \\
& 10^{3} \div 11 = 90 \cdots 10 \\
& 10^{4} \div 11 = 909 \cdots 1 \\
& 10^{5} \div 11 = 9090 \cdots 10 \\
\end{align}
となります。
つまり、\( 10^{n} \)は
\begin{align}
10^{2} & = 11 \cdot 9 + 1 \\
10^{3} & = 11 \cdot 90 + 10 \\
10^{4} & = 11 \cdot 909 + 1 \\
10^{5} & = 11 \cdot 9090 + 10 \\
\end{align}
というように書き換えることができます。
また、\( 10,10^{3},10^{5} \)はそれぞれ
\begin{align}
10 \phantom{^{1}} & = 11 – 1 \\
10^{3} & = 11 \cdot 91 – 1 \\
10^{5} & = 11 \cdot 9091 – 1 \\
\end{align}
と書き換えることができます。
このとき、6桁の数字\( abcdef \)は
\begin{align}
& a \times 10^{5} + b \times 10^{4} + c \times 10^{3} \\
& + d \times 10^{2} + e \times 10 + f \\
= & a (11 \cdot 9091 – 1) + b (11 \cdot 909 + 1) \\
& + c (11 \cdot 91 – 1) + d (11 \cdot 9 + 1) \\
& + e (11 – 1) + f \\
= & \underline{ 11( 9091 a + 909 b + 91 c + 9 d + e ) } \\
& – a + b – c + d – e + f \\
\end{align}
と表すことができます。
下線部は11で割り切れますので、下線部以外の\( – a + b – c + d – e + f \)が11で割り切れれば、十進法の\( abcdef \)は11で割り切れることになります。
言い換えると、下から数えて奇数桁(下1,3,5,…桁目)を足し、下から数えて偶数桁(下2,4,6,…桁目)を引いたものが11の倍数であれば、6桁の数字\( abcdef \)は11の倍数と判定できるということになります。