ここでは、\( \sum \)(シグマ)という記号について説明します。
まずは
- \( \sum \)(シグマ)の定義
- \( \sum \)(シグマ)の性質
について。
その後、\( \sum \)(シグマ)という記号を導入することで見えてくるもの・わかることを紹介します。
Σ(シグマ)は、数列の和を簡潔に表すための記号
ここまで等差数列、等比数列と見てきましたが、数列\( \{ a_n \} \)の初項から第n項までの和を
\[ a_1 + a_2 + a_3 + \cdots + a_n \]
と書いてきました。
この書き方は具体的で理解しやすいですが、長くなりやすく、式全体の見通しが悪くなることもあります。
そこで、数列\( \{ a_n \} \)の初項から第n項までの和を
\( \sum \)という記号を用いて
\[ \sum_{k=1}^{n} a_k \]
と簡潔に表すことにしたのです。
数列\( \{ a_n \} \)の初項から第n項までの和を
\[ \sum_{k=1}^{n} a_k \]
と表す。つまり
\[ \sum_{k=1}^{n} a_k = a_1 + a_2 + a_3 + \cdots + a_n \]
この定義は、言い換えると、次のようにも言えます。
\[ \sum_{k=1}^{n} a_k \]
は、第k項が\( a_k \)で表される数列の初項から第n項までの和を表している。
さて、\( \sum \)記号に慣れるために、いくつかの例を見ていきましょう。
(問題)次の和を求めなさい
\begin{align*}
(1) & \sum_{k=1}^{n} (3k – 1) \\
(2) & \sum_{k=1}^{n} 3 \cdot 2^{k – 1} \\
(3) & \sum_{k=1}^{n} 3 \\
(4) & \sum_{k=1}^{n} 2n
\end{align*}
(解答)
(1)
\[ \sum_{k=1}^{n} (3k – 1) \]
は、【\( \sum \)の意味(定義の言い換え)】で見たように考えると
”第k項が\( 3k – 1 \)で表される数列の初項から第n項までの和”
を表しています。
つまり
\begin{align*}
& \sum_{k=1}^{n} (3k – 1) \\
= & (3 \cdot 1 -1) + (3 \cdot 2 -1) + (3 \cdot 3 -1) \\
& + \cdots + (3 \cdot n -1) \\
= & 2 + 5 + 8 + \cdots + (3n -1)
\end{align*}
と表される。
これは、
”初項2、公差3の等差数列”
になっていますから、その和は等差数列の一般項・和の公式についてでも説明したように
\begin{align*}
& \frac{1}{2}n\{2 + (3n -1)\} \\
= & \frac{1}{2}n(3n + 1)
\end{align*}
と表すことができます。
(2)
\[ \sum_{k=1}^{n} 3 \cdot 2^{k – 1} \]
という式は
”第k項が\( 3 \cdot 2^{k – 1} \)で表される数列の初項から第n項までの和”
を表しています。
つまり
\begin{align*}
& \sum_{k=1}^{n} 3 \cdot 2^{k – 1} \\
= & 3 \cdot 2^{1 – 1} + 3 \cdot 2^{2 – 1} + 3 \cdot 2^{3 – 1} \\
& + \cdots + 3 \cdot 2^{n – 1} \\
= & 3 + 3 \cdot 2 + 3 \cdot 2^2 + \cdots + 3 \cdot 2^{n – 1}
\end{align*}
と表される。
これは、
”初項3、公比2の等比数列”
になっていますから、その和は等比数列の一般項・和の公式についてでも説明したように
\begin{align*}
& \frac{1}{2-1}(3 \cdot 2^{n} – 3) \\
= & 3(2^{n} – 1)
\end{align*}
と表すことができます。
(3)
\[ \sum_{k=1}^{n} 3 \]
という式は
”第k項が\( 3 \)で表される数列の初項から第n項までの和”
を表しています。
つまり
\begin{align*}
\sum_{k=1}^{n} 3 = 3 + 3 + 3 + \cdots + 3
\end{align*}
という”3をn回足した形”をしています。
つまり
\begin{align*}
\sum_{k=1}^{n} 3 = 3n
\end{align*}
となるのです。
(4)
\[ \sum_{k=1}^{n} 2n \]
という式は
”第k項が\( 2n \)で表される数列の初項から第n項までの和”
を表しています。
つまり、(3)と同じように考えると
\begin{align*}
\sum_{k=1}^{n} 2n = & 2n + 2n + 2n + \cdots + 2n \\
= & 2n^2
\end{align*}
となります。
Σ(シグマ)の2つの性質
\( \sum \)(シグマ)記号を学ぶうえで知っておきたい性質が2つあります。
”\( \sum \)は数列の和を表している”ということを考えてみれば、当たり前の性質ですが、この性質を使うことで、\( \sum \)の凄さを理解することにつながるのです。
\( c \)を定数とする
\begin{align*}
(1) & \sum_{k=1}^{n} (a_k + b_k) = \sum_{k=1}^{n} a_k + \sum_{k=1}^{n} b_k \\
(2) & \sum_{k=1}^{n} ca_k = c \sum_{k=1}^{n} a_k
\end{align*}
(1),(2)の式は、\( \sum \)の定義が
\[ \sum_{k=1}^{n} a_k = a_1 + a_2 + a_3 + \cdots + a_n \]
であることに戻って計算すると、ただちに証明できます。
(証明)
(1)
順番を入れ替えて、数列\( \{ a_k \} \)の項と\( \{ b_k \} \)の項をそれぞれまとめると、次のように証明することができます。
\begin{align*}
& \sum_{k=1}^{n} (a_k + b_k) \\
= & (a_1 + b_1) + (a_2 + b_2) + (a_3 + b_3) \\
& + \cdots + (a_n + b_n) \\
= & (a_1 + a_2 + a_3 + \cdots + a_n ) \\
& + ( b_1+ b_2 + b_3 + \cdots + b_n) \\
= & \sum_{k=1}^{n} a_k + \sum_{k=1}^{n} b_k
\end{align*}
(2)
\begin{align*}
& \sum_{k=1}^{n} ca_k \\
= & ca_1 + ca_2 + ca_3 + \cdots + ca_n \\
= & c(a_1 + a_2 + a_3 + \cdots + a_n) \\
= & c \sum_{k=1}^{n} a_k
\end{align*}
この性質を使って、問題(1)をもう一度解いてみると、その凄さが垣間見れます。
Σ(シグマ)で和を簡潔に表せるからこそわかること・見えてくるもの
等差数列の和は、1からnまでの和を知っていれば計算できる
問題(1)で解いた数列
\[ \sum_{k=1}^{n} (3k – 1) \]
について、【\( \sum \)の性質】を用いて、もう一度考えてみましょう。
\( \sum \)の性質の(1),(2)をそれぞれ用いると
\begin{align*}
& \sum_{k=1}^{n} (3k – 1) \\
= & \sum_{k=1}^{3n} k – \sum_{k=1}^{n} 1 \\
= & 3\sum_{k=1}^{n} k – \sum_{k=1}^{n} 1 \\
\end{align*}
と式変形できます。
ここからわかることは
\( \displaystyle \sum_{k=1}^{n} (3k – 1) \)は、\( \displaystyle \sum_{k=1}^{n} k \)、\( \displaystyle \sum_{k=1}^{n} 1 \)がわかれば計算できる
ということ。
\( \displaystyle \sum_{k=1}^{n} 1 \)は、\( \sum \)の定義を考えると
\[ \sum_{k=1}^{n} 1 = n \]
となりますので、
一般項が\( 3k – 1 \)で表される等差数列の初項から第n項までの和は、1からnまでの自然数の和がわかれば計算できる
ということです。
1からnまでの自然数の和は、等差数列の一般項・和の公式についてで和の公式を求めたのと同じ方法を使えば
\[ \frac{1}{2}n(n+1) \]
と求めることができますので、問題の数列の和は
\begin{align*}
& 3\sum_{k=1}^{n} k – \sum_{k=1}^{n} 1 \\
= & 3 \cdot \frac{1}{2}n(n+1) – n \\
= & \frac{3}{2}n^2 + \frac{3}{2}n – n \\
= & \frac{3}{2}n^2 + \frac{1}{2}n \\
= & \frac{1}{2}n(3n + 1) \\
\end{align*}
となります。
このことは、どんな等差数列でも言えます。
でも、これって凄いことなの?
と思っている方がおられるかもしれません。
そこで、ここからは、\( n^2 \)や\( n^3 \)が現れる数列を考えてみようと思います。
nの2次式で表される数列の和は、2乗の和を知っていれば計算できる
ここでは、一般項がnの2次式で表される数列の和について考えていきます。
ここでは、例として
\[ 3n^2 + 2n + 1 \]
を見ていきましょう。
この数列を具体的に書き表すと
\[ 6,17,34,57,86,\cdots \]
となります。
この数列の初項までの和、第2項までの和、…を順番に書いていくと
\[ 6,23,57,114,200,\cdots \]
となります。
第n項までの和なんて、ぜったい無理…
と思われるかもしれません。
こういったときこそ、”\( \sum \)の簡潔さ”が威力を発揮するのです。
実際に、この数列の初項から第n項までの和は、\( \sum \)を用いると
\begin{align*}
& \sum_{k=1}^{n} (3k^2 + 2k + 1) \\
= & 3 \sum_{k=1}^{n} k^2 + 2 \sum_{k=1}^{n} k + \sum_{k=1}^{n} 1 \\
\end{align*}
と書き表すことができます。
そして
\begin{align*}
& \sum_{k=1}^{n} 1 = n \\
& \sum_{k=1}^{n} k = \frac{1}{2}n(n+1)
\end{align*}
となるのは、いままで見てきたとおりです。
つまり
元の数列\( 3n^2 + 2n + 1 \)の初項から第n項までの和は、1からnまでの自然数の2乗の和が求められれば計算できる
ということです。
このことは、この数列に限ったことではありません。
つまり
一般項がnについての2次式で表される数列の初項から第n項までの和は、1からnまでの自然数の2乗の和が求められれば計算できる
ということです。
nのm次式で表される数列の和は、m乗の和を知っていれば計算できる
上で見てきたことは、なにもnの2次式で表される数列に限ったことではありません。
一般項が
\[ a_n = an^3 + bn^2 + cn + d \]
とnの3次式で表される数列についても
\begin{align*}
& \sum_{k=1}^{n} (ak^3 + bk^2 + ck + d) \\
= & a \sum_{k=1}^{n} k^3 + b \sum_{k=1}^{n} k^2 + c \sum_{k=1}^{n} k + d \sum_{k=1}^{n} 1 \\
\end{align*}
と式変形できますので、
1からnまでの自然数の2乗の和と3乗の和が求められれば計算できる
ということです。
4次、5次、…、m次となっていっても同様です。
つまり、nのm次式で表される数列の和は
\[ \sum_{k=1}^{n} k^m,\cdots,\sum_{k=1}^{n} k^2,\sum_{k=1}^{n} k,\sum_{k=1}^{n} 1 \]
がわかれば計算できるということが言えるのです。
そこで、私たちの興味は
”はたして2乗の和、3乗の和、…、m乗の和はいくつになるのか?”
ということに移っていくのです。
リンク︰【まとめ】2乗の和の公式の求め方
リンク︰【まとめ】3乗の和の公式の求め方